齋藤大悟:Daigo Saito

Dialogue: with Waves

竹の子族

昨日は、土門拳写真美術館で開かれた渋谷典子さんのギャラリートークに出席。現在、美術館では特別展「Double Body-細江英公と土門拳」と、KDMop Photo Selection 渋谷典子「竹の子族/映画の人々」が開催されていて、土門拳と酒田にゆかりのある作家たちの写真観に触れられる貴重な機会となっている。

ギャラリートークは、写真と共にある渋谷さんの道のりを、淡々としたリズムで、静かに、時に笑いを誘いながら、終始自然体で語りかけてくるような流れだった。まず、伝説的な私塾と言われるWORKSHOP写真教室に入塾したお話では、講師である東松照明氏と森山大道氏とのエピソードについて拝聴した。東松氏は「僕を先生と呼ばないでください」と言われ、網の目のように皆と一緒になって学ぶことを促されたこと、森山氏は授業をせずただ将棋ばかりしていて業を煮やした渋谷さんが氏に一言したが、後になって将棋をしている場面を撮るべきだったと気付かされたことなど、このエピソードだけでも両氏の人となりや写真観が立ち現れてくるように思えた。東松氏の「僕は透明人間」、森山氏の「写真は自由、なんでもいいんだよ」という言葉が、今も渋谷さんの根底にあると言われていた。

「竹の子族」に関しては、今回の展覧会告知を見るまで私はまったく知らなかった。年代的にはうちの親世代だと思うが、母親にたずねてみると、都会で起こっている現象で遠く縁のない出来事として受け止めていたという。そのとき何をしていたか聞くと、「会社で働いていた」と返ってきた。竹の子族の撮影では、渋谷さんご自身も若者たちと一緒になって楽しみ、面白おかしく、若者たちのエネルギーが渦巻く中を、共に渦になって撮影している感覚だったという。レンズは35mm、長玉でも50mmを使われていたようで、選択される焦点距離が、そのまま対象との関係性を表しているようにも思えた。

「映画の人々」に関しては、名優の方々とのエピソードを始め、このご時世ではありえない昭和のリアルに触れた。印象に残っているのは「カメラを持っているとこんなにも近づけるんだ」という一言。あまりのオーラに近づき難い人でも、カメラを構えるといつの間にか触れそうなほどに接近していたという。

このほか、渋谷さんが近年取り組まれている地元酒田の風景を写した作品が、展示室へ向かう通路の壁面に10点ほど展示されていた。この通路は、窓からイサム・ノグチの彫刻や谷口吉生建築の一角を眺められるポイントであり、外光がプリントを照らし出して酒田の空気感と共にあるような印象を受けた。渋谷さんは、地元でありながら酒田のことは何も分かっていなかったと気付かされたことを契機に、酒田を訪れるたびに好きな港に行き、街をぶらぶらし、面白いと思ったものを写しているという。ここにも、ご自身の自然体な姿勢が静かに表れていた。これまで「撮れない」という時期はなく、スランプとは無縁だったことや構図を考えて撮らないことは、渋谷さんの姿勢やお人柄から自然に生まれてくるスタイルだとも感じた。特に印象に残っているのは、写真はコミュニケーションであり出会いの場であるという渋谷さんの、多くの方々との関係性に向ける感謝の言葉だった。